まだ昨年の草が枯れたままの状態で黄色いサンドシート地域は砂漠といっても植物が生息できる限られたスペース。6月も末に入ろうとするこの時期には根元から新しい緑の葉が伸び始めている。そしてそれら多年草が葉を大きく広げる前に花を咲かせ始めているサボテンたちの姿が印象的だった。植物がやっと根をはれる地域は多くの種類が群生、共存しているが、その中でも砂漠にふさわしいアダプテーションをしているのがサボテンたちである。とげを体中に張り巡らしている姿。長いとげや短いとげ。太いとげや毛のように細かいとげ。コロラド南部のサボテンたちの背丈はそれほど高くなく、地面(砂面)に広がるようなものが多い。背丈はせいぜい砂面から20センチ位あれば高いほうであろうか。同じ砂漠地帯でも、
コロラドよりも南西部に位置するアリゾナ州などには背丈が4〜5メートルにもなる巨大なものもある。またのっぽでないものでも丸太のような塊にもみえるサボテンさえある。土地それぞれの土壌(砂の成分)や気候がもたらす水分、気温、日照条件などが、それぞれの形体や大きさを決めさえているのだろう。
これらサボテンたちも、他の野草たちと同様に開花の時期が、暗黙の了解で決められているかのようにあるらしい。この左のサボテンは既に花をほぼ咲き終えているが左下と右上のサボテンはこれからが開花の時期になる。色、形、大きさもそれぞれで、地味ではあるが見ていると楽しくなる。この左のサボテンは石の間などに生えている小さなもので、足場を気をつけないと踏みつけてしまうくらいだが、他のものは石のない砂地でも群生しながらはえている。限られた雨量や露からの水の補給をそれぞれ管理しながら地道に生きている。
砂漠というとどうも生き物がいないように思われるが、これらサボテンが開花する時期には虫も増え始める。蚊や虻、蚋という人間が入り込むと容赦なく血を吸いに集まる連中も多いが、献血はともかくも、残していくあの毒には閉口する。痒くて、痛い。特に蚋に刺されたものは1ヶ月しても跡が消えない。虫が増えるということは、それらを食べる他の虫や鳥が集まる。そして野草の葉や実を食べる哺乳動物とそれらを捕食する猛禽類や肉食の小動物たち。砂漠地帯であっても近くの森からミュール鹿やエルク大鹿が訪れて草を食べる。高原の平原地帯に生息するプログホーンたちも訪れる。
砂漠というと死の世界と先入観を持っている人が少なくないが、季節を通じて様々なドラマが繰り広げられている。
それにしても湿度が一桁%で風があり、紫外線が強い日射がある。水をどれだけ持って行っても脱水状態になる気候。虫除けクリームを塗っても刺してくる虫たち。三脚を担ぐ手の平の皮がかさかさになり、白く粉吹き芋のようになる関節部分の皺。私には過酷な環境なのかもしれないが、写真撮影という魅力とともに、何度痛い(痒い?)思いをしても行きたくなるのは、いつ行っても何かを見せてくれるという期待があるからであり、また写真を撮らせてもらえる楽しみ、そして何よりも自然と接することによって得られるエネルギーの有難さを強く認識しているからだろう。
過酷な条件。この「条件」が五感を研ぎ澄まさせてくれる。私にとっては、この過酷な砂漠地帯が写真というものを通して自然と交わる接点を与え続けてくれている。
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